株式会社カーリン - Carlin, Inc.

プレスリリース

2019.2.22

【記者発表】最新ファッショントレンドの分析をAIがサポート
~有名ブランドのコーディネートを色やアイテムで気軽に検索~


○発表者:
本間 裕大(東京大学 生産技術研究所 准教授)
ファッションプレス(株式会社 カーリン)

○発表のポイント:
◆Louis VuittonやGucci、Pradaなど、メンズ・ウィメンズ合わせて計160コレクションの写真(1シーズン当り約7千枚)のフォーマットを整えてデータベース化し、最新のファッショントレンドを数理的に解析するシステムを構築しました。
◆有名ブランドのコーディネート例を、好みの色やアイテムで、異なるブランドやシーズンも横断して検索できるギャラリーをウェブサイト上で公開します。
◆2019年春夏コレクションのトレンドに着目し、システムを活用した客観的な解析結果とエディターが持つ独自の感性とを融合した、新しい切り口の特集記事を迅速にウェブ上に掲載することが可能になりました。

○発表概要
 東京大学 生産技術研究所の 本間 裕大 准教授とオンラインメディア ファッションプレス(https://www.fashion-press.net/、注1)を運営する株式会社カーリンらの研究グループは、ファッションブランドのコレクション情報を数理解析用データとして一元管理し、最新ファッショントレンドの分析や評価を行うシステムの構築を共同で行ってきました。
このたび、ファッションプレスが持つ膨大なコレクション・ルック(コレクションの写真、注2)を、色やアイテムなど従来とは異なる切り口で横断検索できる新ギャラリーを公開します(図1)。有名ブランドが提案するコーディネートの横断検索機能はこれまでに例がなく、これにより一般ユーザーはより主体的に最新ファッションを追求することができます。また、数理解析システムを活用しながらエディターが執筆した2019年春夏コレクションの特集記事も同時に多数公開し、より魅力あるコンテンツを展開していきます(表1)。

○発表内容
<研究の背景>
 Louis VuittonやGucci、Pradaに代表される多くのファッションブランドは、パリやロンドン、ミラノ、そして東京などで年に2回(春夏、秋冬)、コレクションを発表します。デザイナーの創造性が詰まったコレクションは、シーズンの最新トレンドを捉える上で極めて重要です。ファッションプレスでは毎シーズン約800コレクション、計3万枚以上と、日本屈指の枚数となるルックを保持しており、ユーザーが気軽に楽しめるギャラリーとして、公開しています。
 一方で、毎年、膨大な数のコレクションが発表されるため、ブランドやシーズンによる絞り込みだけでは、ユーザーが本当に見たいルックにたどり着くことが困難でした。膨大なコレクション・ルックの、適切なデータベース化とその活用が望まれていました。

<研究の成果>
 ファッションプレスが保持するデータを、より客観的に、そして写真の情報を最大限に取り込みながら、これまでより幅広く取り扱えるように、東京大学 生産技術研究所の本間研究室とファッションプレスは共同で、数理的アプローチを用いたコレクションデータの解析手法の探索を行ってきました。重視したテーマは、(i)データの一元管理手法の確立と、(ii)数理解析手法の構築です。

(i)数理解析用データに適したフォーマットによるコレクション・ルックの一元管理
 各コレクション・ルックは画像データのため、そのままでは数理解析に適しません。そこでデータの扱いやすさを高めつつ、その膨大なルックを一元管理するためのデータフォーマットを整理し、実際に2014年以降のデータに対し、変換を施しました。このデータベース構築によって、コレクション・ルックに対して飛躍的に数理解析がしやすくなりました。

(ii)コレクション・ルックの数理解析手法の構築とシステムとしての実装
 次に、データに対してどのような数理解析が可能かについて、多角的に検証しました。その結果、データの偏りに関する統計的評価や、ルックの類似性に基づくクラスタリング(注3)などの有用性が確認されました。そこで、本数理解析手法を、エディターが容易に取り扱えるシステムとして実装しました。

 2019年2月22日(金)より、(A)新ギャラリーや(B)特集記事など、多数の新コンテンツをファッションプレスサイト上で公開します。

(A)色×アイテムによる横断検索が可能な新ギャラリーの公開
 これまではシーズンごと、ブランドごとでの絞り込みしかできなかった膨大なルックを、新たに色ごと、アイテムごと、あるいはその組み合わせなどで横断検索することが可能となります。ユーザーは、自身が好む色やアイテムにターゲットを絞り、コーディネート方法などを、ブランドを気にせず横断的に把握することが可能となります。読者モデルを対象とした類似サービスとは異なり、有名ブランドが発信するコレクションを対象としているため、一般ユーザーは、より洗練されたファッションコーディネートを、主体的に追求できるようになります。

(B)数理解析システムの活用による2019年春夏コレクションの特集記事を公開
 エディターは、本研究で構築した数理解析システムを活用することによって、ファッションプレスが保持するデータを多角的かつ客観的に把握することが可能となります。これからシーズンを迎える2019年春夏コレクションのトレンド着目した特集記事を、新しい切り口から効率的に公開できるようになります。

情報が氾濫するIoT社会だからこそ、その情報を適切に整理し、よりユーザーが望む形で提供していくことが、ポータルサイトとしての重要な使命です。本研究は、そのような情報の再構築による価値創造を目指したものであり、デザインとエンジニアリングとの新たなる融合の可能性を示していると考えています。

○用語解説
注1)ファッションプレス
 ファッションを中心にビューティー、アート、グルメ、音楽、映画など、ライフスタイルに関する情報を発信するオンラインマガジン。Webテクノロジーをベースに、より多くの人々に最新のライフスタイルを提案。2009年設立。月間約5,200万PV、600万ユニークユーザーを誇る。

注2)コレクション・ルック
 コレクションとは、フランス・パリ、イタリア・ミラノ、アメリカ・ニューヨーク、イギリス・ロンドンの各都市で、ファッションブランド・デザイナーがランウェイショー・発表会・展示会形式で最新ファッションを発表するファッション・ウィークのこと。世界四大コレクションと呼ばれるパリ、ミラノ、ニューヨーク、ロンドンでは、春夏・秋冬のコレクションを年2回、メンズ・ウィメンズ異なる時期に発表。これら4都市に加え、東京、上海、シドニーなど世界各都市でファッション・ウィークが開催されている。また、ルックとは、各ファッションブランドがシーズン毎に用意しているカタログのようなもの。新作ファッションを着たモデルを撮影した写真集、ランウェイショーを撮影した写真など形式はブランドによって異なる。

注3)クラスタリング
多数のデータを、類似した傾向を持ついくつかのグループに分類するための数学的手法。各グループのデータ数の違いに着目することによって、その傾向を把握することが可能となる。

添付資料
図1:色やアイテムによる横断検索結果のイメージ

表1:システムを活用した2019年春夏コレクション特集記事の例
東京大学生産技術研究所リリースページ: http://www.iis.u-tokyo.ac.jp/ja/news/3052/